「回してすりおろす」と味が激変する
お刺身やそばに欠かせない「わさび」。実は、すりおろし方ひとつで「ツーンとくる辛さ」が抑えられ、代わりに「爽やかな香りと甘み」が引き立つことをご存知でしょうか?
ポイントは、力任せに上下に動かすのではなく、「の」の字を書くように、ゆっくりと円を描きながらすりおろすことです。これだけで、高級お寿司屋さんで出てくるような、クリーミーで風味豊かなわさびに仕上がります。なぜ、ただ回すだけでこれほどまで味が変わるのか、その秘密はわさびの細胞に隠されています。
なぜ「回す」と辛さが抑えられ、香りが立つのか?
わさびの辛味成分である「アリルイソチオシアネート」は、実は最初からわさびの中にあるわけではありません。細胞が壊れた際、中の成分と酵素が混ざり合うことで初めて発生します。
強く上下にすりおろすと、細胞が荒く壊れてしまい、刺激の強い辛味成分が一気に放出されます。一方、優しく回しながらおろすと、細胞が非常に細かく、均一に壊れます。これにより、空気が適度に含まれて粘り気が増し、辛味よりも先に「わさび本来の甘みと香り」が前面に出てくるようになるのです。
実践!わさびのポテンシャルを最大限に引き出す手順
「回しておろす」以外にも、味を劇的に良くするいくつかのステップがあります。
1.茎の方からおろす
意外かもしれませんが、先端(細い方)ではなく、茎が付いていた上部からおろすのが正解です。茎に近い方が香りが強く、色も鮮やかです。
2.茎は手でむしる
包丁で切り落とさず、手で外側の茎をむしり取ることで、香りが逃げるのを防ぎます。
3.皮は剥かない
皮のすぐ近くに香りの成分が多いため、タワシなどで軽く洗う程度にし、皮ごとすりおろすのがコツです。
4.おろし金にこだわる
もし可能なら「鮫皮(さめがわ)おろし」を使うのが理想ですが、金属製でも「円を描く」ことを意識すれば十分美味しくなります。
もし「辛くしたい」時はどうすればいい?
「わさびは辛くないと物足りない!」という方もいますよね。その場合は、あえて逆の方法をとります。
直線的に、力を入れて素早くおろす
細胞を激しく破壊することで、辛味成分を強く引き出せます。
先端からおろす
根の先端部分は水分が少なく、辛味が凝縮されている傾向があります。
このように、おろし方を変えるだけで「香り重視」か「辛味重視」かを自由自在にコントロールできるのです。食べる料理(お刺身なら香り、脂の乗った肉なら辛味など)に合わせて使い分けるのが通の楽しみ方です。
知っておきたい!わさびの効果と保存の雑学
最後に、わさびをもっと活用するための豆知識です。
わさびには非常に強力な殺菌作用があり、生ものの鮮度を保つ助けになります。また、食欲を増進させる効果や、最近では美肌効果も注目されています。余ってしまった本わさびは、乾燥が大敵です。濡らしたキッチンペーパーで包み、ラップをして冷蔵庫に入れれば1〜2週間は持ちます。もし使いきれない場合は、すりおろした状態で冷凍保存も可能。解凍しても、意外なほど香りが残っていますよ。